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ケストナーの信念がびりびり伝わる
本書は、ケストナーの日記や手紙をもとに、彼の生涯を詳しく
客観的に紹介した伝記である。家庭の事情やマザコンだったこと、
失恋話や愛人を作ったことなど、私生活もケストナーの心の思いも
ありのまま書き出されている。
例えば『飛ぶ教室』に出てくるエピソードと同じ経験を
ケストナー自身が体験していたことなども記されていて、
彼の作品をより楽しく身近に感じられるようになる。
しかし、この本で最も目を引くのは、ケストナーの戦争に対する
考え方である。彼は政治や社会を鋭く見つめ、体制に批判的な
文章を発表していたため、ナチス政権下で執筆活動を禁止される。
命が狙われる危険もあったのに、亡命せずドイツに留まり、
愛する祖国が変貌していく様子をじっと観察していた。
戦後、彼が発表した詩やエッセイが所々に引用されている。
それらの文章から、激動の時代を生き抜いた作家の、平和に対する
願いが強く感じられる。時には厳しく、時には優しく、そして必ず
ユーモアを交えながらドイツの人々に様々なメッセージを伝え続けた
ケストナーの信念を、この本はたっぷりと教えてくれる。
時代の目撃者
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