カスタマーレビュー
おすすめ度:
朝日新聞(出身者)の影響力
(2008-12-21)
現在の中南米の反米的な潮流を、歴史的な背景を詳しく説明しつつ、解説している本です。 中南米の政治や社会を理解する上で、その入門書としては良いのではないかと思います。
しかしながら、CUBAについての記述では、現在CUBAが抱える諸問題については全く触れられておらず、CUBA革命の“輝かしい”部分のみを肯定的に描くだけにとどまっているのがなんとも残念です。 著者は数年前まで朝日新聞でCUBAの(当時の)最新ニュースを配信し続けてきた方です。 様々なしがらみから何も書けないのか、それとも著者はCUBAの表層し掴むことができなかったのか。
朝日という非常に影響力のあるメディアの出身者である著者の言葉には大変な重みがあると思います。 CUBAについて今まで知る機会のなかった読者、予備知識のない読者は、著者の描く“CUBA”がその真の姿であると考えると思います。 著者の言葉をそのまま鵜呑みにしてしまうのでしょう。
著者はパナマの項で米国のTVを批判していますが、著者自身の記述にももう少し配慮が必要かもしれません。
コンパクトにまとまった必読本
(2008-10-17)
作家のアレナスはカストロ政権に耐えられずキューバから合州国に脱出した。
作家のアジェンデはチリの殺されたアジェンデ大統領の姪だけれど、合州国に亡命して暮らしている。合州国に痛めつけられた国家から抜け出す先もやはり豊かな合州国であるというところが、現代の大きなねじれの一つか。
そのねじれを、合州国に虐げられた中南米の国々の視点からコンパクトにまとめた本だ。この本を読むと、チャベスもエキセントリックな独裁者ではなくなるし、カストロもごりごりの共産主義者ではなくなる。
合州国の、自己都合の正義を名目にした横暴さがよく分かる。時に著者の語り口が熱くなりすぎるのもよろしいんじゃないですか、だって熱くならざるをえない内容だもの。
アメリカを単純化しすぎなのではないか
(2008-09-11)
おもしろいがなんだかんだで偏っている本だと思う
週刊金正日や赤旗か、といったところで
反米政策というのもソ連とか、あるいは中国やEUみたいにパトロンがいないと
経済的他いろいろな面で持続はできないと思うのだが
こればっかりは市民の力でもどうにもならないのだが如何であろうか
アメリカがラテンアメリカに干渉しまくってきた歴史が綴られているのだが
「干渉するアメリカ」という主語をよく考えてみると違和感がある
あるときはフルーツを生産する巨大企業だったり
あるいはパナマ運河の利権を確保しようとするアメリカ本体であったり
アメリカ、という統一された意思がある訳じゃないんだよな
それをあたかも統一された何かがあるように書くからw
アメリカが日本に対しても同じような政策をとったと言うけれども
GHQに巣くうニューディーラーよって農地解放がされて
今度は逆コースとして公職追放が取り消され再軍備へと向かう
このようにアメリカだって一枚岩じゃないんだしね
反○○本というのは、得てして○○を単純化しようとする
この本もそういう罠にはまったのではないか
実はアメリカは単純だったというオチもあるやもしれないが
そして市民の連帯の力を強調するのだけれども
日本がラテンアメリカみたいにならなかったのは市民の力ではなく
親米だけどその要求を巧みに受け流す保守の政治家が君臨してきたからで
ラテンアメリカにはそういうのがいなかったからだと思うのだ
反米・親米双方の極端な政治に陥らずこういう矛盾した政策を実行にするには
ばらまき政策が必要にはなるものの左右からの広範で支持が必要で
自民党の派閥政治がそれを支えてきたのはいうまでもない
過去の中南米の歴史。それはアメリカの世界戦略の実験場の歴史であった。
(2008-04-29)
朝日新聞の中南米特派員、中南米専門家の伊藤千尋による最新の南米大陸情報。
2006年9月20日、国連総会の一般討論に臨んだベネズエラのチャべス大統領は、「悪魔が昨日、ここに来た。この演台は、まだ硫黄のにおいがする」とブッシュ米大統領を指して、八回も「悪魔」と読んだ。本書はこの引用から始まる。
反米化したのはベネズエラに限らない。2002年にはブラジルの左派労働者党のルーラー大統領、2003年にはアルゼンチンの左派キルチネル政権が発足した。2005年には「南米のスイス」ウルグアイで独立以来初のバスケス大統領による左派政権が生まれる。2006年にはボリビアで先住民出身で社会主義運動党のモラレス大統領、ペルーでは中道左派、ガルシア大統領が、エクアドルでは反米左派のコレアが大統領となった。2006年11月にはニカラグアで左翼革命政権のオルテガが16年ぶりに政権を奪取し、同年末にはチャべスが三選を果たす。
アメリカの常套手段である「リメンバー方式(卑怯な相手の行動を思い出して聖戦に立ち上がろう)」の最初がメキシコとの戦い「リメンバー・ジ・アラモ」(テキサスを併合)であり、スペインとの戦い「リメンバー・ザ・メイン」(キューバの占領)であった。「リメンバー・パールハーバー」も同じ文脈で語られる。
コロンビアから運河を手に入れるためのパナマの独立運動支援。ユナイテッド・フルーツ社によるグアテマラの支配と背後でのアメリカの介入。1973年9月11日のCIAの暗躍によるチリでのクーデター。レーガンによるニカラグア、エルサルバドルの介入。米軍が直接侵攻したグレナダ侵攻に至るまで、これまでのアメリカの手口が紹介されている。
一方、南米共同体に向けての、南米南部共同市場(メルコスール)や米州ボリバル代替構想など、これまでにない新しい動きを紹介して締めくくっている。
ラテンアメリカ干渉史(抄本)と改題しては
(2008-03-23)
全編、アメリカが中南米において19世紀以降いかにあくどいことをしてきたかの記述に終始している。このテーマは今までに数多くの書物がより体系的に取り上げている。
この本に期待していたのは、冒頭に紹介されている著者言うところの「反米政権」のアメリカに対するスタンスは実際どのようなものか、また国内問題にどのように対処してきたかということであった。確かにベネズエラを除き21世紀の中南米の「左派政権」を分析するのは時期尚早かもしれないが、新書ということで少しはホットな情報が見たかった。
先のコロンビアとエクアドル間の紛争の経緯に見られるように、現代の中南米は反米・親米、左派・右派というような単純な図式で分析できるものではない。環境として存在するグローバリゼーションの中での各国の駆け引きを見ることなしでは現状を見誤ることになる。チャベスのオイルマネーの少なからぬ部分がアメリカによる購入に依存することくらい書いてもいいのではないか。
第5章「立ち上がった中南米」でいよいよ語り始めると思ったら、内容はキューバ革命。最後までがっかりさせてくれます。著者の頭は未だ冷戦体制のようです。
おすすめ度:
朝日新聞(出身者)の影響力
現在の中南米の反米的な潮流を、歴史的な背景を詳しく説明しつつ、解説している本です。 中南米の政治や社会を理解する上で、その入門書としては良いのではないかと思います。
しかしながら、CUBAについての記述では、現在CUBAが抱える諸問題については全く触れられておらず、CUBA革命の“輝かしい”部分のみを肯定的に描くだけにとどまっているのがなんとも残念です。 著者は数年前まで朝日新聞でCUBAの(当時の)最新ニュースを配信し続けてきた方です。 様々なしがらみから何も書けないのか、それとも著者はCUBAの表層し掴むことができなかったのか。
朝日という非常に影響力のあるメディアの出身者である著者の言葉には大変な重みがあると思います。 CUBAについて今まで知る機会のなかった読者、予備知識のない読者は、著者の描く“CUBA”がその真の姿であると考えると思います。 著者の言葉をそのまま鵜呑みにしてしまうのでしょう。
著者はパナマの項で米国のTVを批判していますが、著者自身の記述にももう少し配慮が必要かもしれません。
コンパクトにまとまった必読本
作家のアレナスはカストロ政権に耐えられずキューバから合州国に脱出した。
作家のアジェンデはチリの殺されたアジェンデ大統領の姪だけれど、合州国に亡命して暮らしている。合州国に痛めつけられた国家から抜け出す先もやはり豊かな合州国であるというところが、現代の大きなねじれの一つか。
そのねじれを、合州国に虐げられた中南米の国々の視点からコンパクトにまとめた本だ。この本を読むと、チャベスもエキセントリックな独裁者ではなくなるし、カストロもごりごりの共産主義者ではなくなる。
合州国の、自己都合の正義を名目にした横暴さがよく分かる。時に著者の語り口が熱くなりすぎるのもよろしいんじゃないですか、だって熱くならざるをえない内容だもの。
アメリカを単純化しすぎなのではないか
おもしろいがなんだかんだで偏っている本だと思う
週刊金正日や赤旗か、といったところで
反米政策というのもソ連とか、あるいは中国やEUみたいにパトロンがいないと
経済的他いろいろな面で持続はできないと思うのだが
こればっかりは市民の力でもどうにもならないのだが如何であろうか
アメリカがラテンアメリカに干渉しまくってきた歴史が綴られているのだが
「干渉するアメリカ」という主語をよく考えてみると違和感がある
あるときはフルーツを生産する巨大企業だったり
あるいはパナマ運河の利権を確保しようとするアメリカ本体であったり
アメリカ、という統一された意思がある訳じゃないんだよな
それをあたかも統一された何かがあるように書くからw
アメリカが日本に対しても同じような政策をとったと言うけれども
GHQに巣くうニューディーラーよって農地解放がされて
今度は逆コースとして公職追放が取り消され再軍備へと向かう
このようにアメリカだって一枚岩じゃないんだしね
反○○本というのは、得てして○○を単純化しようとする
この本もそういう罠にはまったのではないか
実はアメリカは単純だったというオチもあるやもしれないが
そして市民の連帯の力を強調するのだけれども
日本がラテンアメリカみたいにならなかったのは市民の力ではなく
親米だけどその要求を巧みに受け流す保守の政治家が君臨してきたからで
ラテンアメリカにはそういうのがいなかったからだと思うのだ
反米・親米双方の極端な政治に陥らずこういう矛盾した政策を実行にするには
ばらまき政策が必要にはなるものの左右からの広範で支持が必要で
自民党の派閥政治がそれを支えてきたのはいうまでもない
過去の中南米の歴史。それはアメリカの世界戦略の実験場の歴史であった。
朝日新聞の中南米特派員、中南米専門家の伊藤千尋による最新の南米大陸情報。
2006年9月20日、国連総会の一般討論に臨んだベネズエラのチャべス大統領は、「悪魔が昨日、ここに来た。この演台は、まだ硫黄のにおいがする」とブッシュ米大統領を指して、八回も「悪魔」と読んだ。本書はこの引用から始まる。
反米化したのはベネズエラに限らない。2002年にはブラジルの左派労働者党のルーラー大統領、2003年にはアルゼンチンの左派キルチネル政権が発足した。2005年には「南米のスイス」ウルグアイで独立以来初のバスケス大統領による左派政権が生まれる。2006年にはボリビアで先住民出身で社会主義運動党のモラレス大統領、ペルーでは中道左派、ガルシア大統領が、エクアドルでは反米左派のコレアが大統領となった。2006年11月にはニカラグアで左翼革命政権のオルテガが16年ぶりに政権を奪取し、同年末にはチャべスが三選を果たす。
アメリカの常套手段である「リメンバー方式(卑怯な相手の行動を思い出して聖戦に立ち上がろう)」の最初がメキシコとの戦い「リメンバー・ジ・アラモ」(テキサスを併合)であり、スペインとの戦い「リメンバー・ザ・メイン」(キューバの占領)であった。「リメンバー・パールハーバー」も同じ文脈で語られる。
コロンビアから運河を手に入れるためのパナマの独立運動支援。ユナイテッド・フルーツ社によるグアテマラの支配と背後でのアメリカの介入。1973年9月11日のCIAの暗躍によるチリでのクーデター。レーガンによるニカラグア、エルサルバドルの介入。米軍が直接侵攻したグレナダ侵攻に至るまで、これまでのアメリカの手口が紹介されている。
一方、南米共同体に向けての、南米南部共同市場(メルコスール)や米州ボリバル代替構想など、これまでにない新しい動きを紹介して締めくくっている。
ラテンアメリカ干渉史(抄本)と改題しては
全編、アメリカが中南米において19世紀以降いかにあくどいことをしてきたかの記述に終始している。このテーマは今までに数多くの書物がより体系的に取り上げている。
この本に期待していたのは、冒頭に紹介されている著者言うところの「反米政権」のアメリカに対するスタンスは実際どのようなものか、また国内問題にどのように対処してきたかということであった。確かにベネズエラを除き21世紀の中南米の「左派政権」を分析するのは時期尚早かもしれないが、新書ということで少しはホットな情報が見たかった。
先のコロンビアとエクアドル間の紛争の経緯に見られるように、現代の中南米は反米・親米、左派・右派というような単純な図式で分析できるものではない。環境として存在するグローバリゼーションの中での各国の駆け引きを見ることなしでは現状を見誤ることになる。チャベスのオイルマネーの少なからぬ部分がアメリカによる購入に依存することくらい書いてもいいのではないか。
第5章「立ち上がった中南米」でいよいよ語り始めると思ったら、内容はキューバ革命。最後までがっかりさせてくれます。著者の頭は未だ冷戦体制のようです。
