カスタマーレビュー
おすすめ度:
対照的な二人の物語
(2008-11-30)
これは、昭和2年4月に組閣された濱口内閣の首相・濱口雄幸と蔵相・井上準之助の物語である。久々に城山翁の本が読みたくなったので買って読んだ。
本の構成としては、冒頭に組閣のシーンが描かれ、それからしばらくの間は二人の生い立ちが交互に記される。しばらくして組閣の場面に戻り、山積する政治課題、とりわけ金解禁の問題にどう対処していくかが描かれる。
上司との対立による左遷、長年の外局勤めなど、およそ出世街道を進んだとはいえない濱口に対し、井上は出世街道まっしぐらの人生であった。ところが、日銀・松尾総裁にうとまれてアメリカに飛ばされてしまう。まったく対照的な人生を送ってきた二人は、精神的な困難に直面したときの心構えも相当に異なる。濱口は黙して語らず、己の身上を度外視して仕事に取り組む腹の太さがあった。一方、スタイリストの井上は外向きには泰然としているが、内心は大いに悲歌慷慨し、妻への手紙に泣きごとのようなことを書き連ねていた。
濱口には運命への達観があったとおもう。それは、諦観のような枯れた考え方ではなく、この場面で誰もやりたがらない仕事をやって踏ん張るのが自分の運命だ、というような自分を度外視した考え方である。一方で、井上には運命の予感を持っていたのだろう。自分は必ず大業を果たす、こんなところで無駄な時間を過ごしているヒマはない、といったような。
そういう二人が、昭和初期の混乱期に同じ内閣に属して金解禁という難事業に取り組んだのは単なる偶然ではなかったのかもしれない。非常に面白い本だった。
金解禁に挑む浜口と井上の生涯を描く
(2008-09-07)
1929年、田中義一内閣の後を受け、成立した浜口雄幸内閣(立憲民政党)。本書は、浜口首相が井上準之助を蔵相として、1917年以降禁止していた金輸出禁止の解禁に二人三脚で挑む男子達の生涯を描いた一冊である。
浜口政権(1929〜1931年)は、産業合理化・緊縮財政をはかった上で金輸出解禁。加え、軍部と対立しながら軍縮政策に努めたことが有名であるが、本書では教科書等では味わうことの出来ない緊迫した昭和初期の雰囲気が、政治信条を貫いた二人の熱い友情と共に描かれている。
命を賭した政治家の姿。
(2008-07-11)
昭和初期、不景気に喘ぐ日本を変えようとした「ライオン宰相」浜口雄幸と、その盟友井上準之助を描いた作品です。
質実剛健、余計なことは口に出さず厳格な印象を与える浜口と、華やかな言動ゆえに敵を作ることも多い井上。生き方も、性格も対照的な二人が、一つの信念のために共に戦っていく姿が、当時の時勢、評論、新聞記事等を織り交ぜながら描かれており、実際に昭和初期の情勢に立ち会っているような感覚を覚えます。城山三郎氏の最高傑作と謳われることも多いこの作品ですが、なるほどと思わされるものがあります。
日本に、こういう人達がいたのだということを、強烈に感じさせてくれる作品だと思います。
本懐かもしれんが
(2008-02-20)
肝心の金解禁と軍縮の話が
なかなか出てこないで
首相と蔵相の覚悟ばかり
聞かされる印象は
否めない。
城山三郎の最高作品。
(2007-10-18)
城山三郎作品の最高作品。
司馬遼太郎作品と同じく、史実の合間にフィクションのニュアンスを詰め込み、見事に読ませる作品に仕上げてある。
当時を振り返った大蔵省及び日銀の資料を読むと、この物語のフィクション性が湧き上がってくるのとだが、これを完全な史実と混同しかねないほどの構成力には恐れ入る。
浜口と井上のキャラクターも見事な好対照で、小説として見事としか言いようがない。
憲政政治期の金解禁論議の空気を感じさせてくれる一冊であり、戦前のデモクラシーという理念に基づいた時代における日本男子の生き方のモデルをとても魅力的に描き出した一冊だ。
秋の読書に、是非。
おすすめ度:
対照的な二人の物語
これは、昭和2年4月に組閣された濱口内閣の首相・濱口雄幸と蔵相・井上準之助の物語である。久々に城山翁の本が読みたくなったので買って読んだ。
本の構成としては、冒頭に組閣のシーンが描かれ、それからしばらくの間は二人の生い立ちが交互に記される。しばらくして組閣の場面に戻り、山積する政治課題、とりわけ金解禁の問題にどう対処していくかが描かれる。
上司との対立による左遷、長年の外局勤めなど、およそ出世街道を進んだとはいえない濱口に対し、井上は出世街道まっしぐらの人生であった。ところが、日銀・松尾総裁にうとまれてアメリカに飛ばされてしまう。まったく対照的な人生を送ってきた二人は、精神的な困難に直面したときの心構えも相当に異なる。濱口は黙して語らず、己の身上を度外視して仕事に取り組む腹の太さがあった。一方、スタイリストの井上は外向きには泰然としているが、内心は大いに悲歌慷慨し、妻への手紙に泣きごとのようなことを書き連ねていた。
濱口には運命への達観があったとおもう。それは、諦観のような枯れた考え方ではなく、この場面で誰もやりたがらない仕事をやって踏ん張るのが自分の運命だ、というような自分を度外視した考え方である。一方で、井上には運命の予感を持っていたのだろう。自分は必ず大業を果たす、こんなところで無駄な時間を過ごしているヒマはない、といったような。
そういう二人が、昭和初期の混乱期に同じ内閣に属して金解禁という難事業に取り組んだのは単なる偶然ではなかったのかもしれない。非常に面白い本だった。
金解禁に挑む浜口と井上の生涯を描く
1929年、田中義一内閣の後を受け、成立した浜口雄幸内閣(立憲民政党)。本書は、浜口首相が井上準之助を蔵相として、1917年以降禁止していた金輸出禁止の解禁に二人三脚で挑む男子達の生涯を描いた一冊である。
浜口政権(1929〜1931年)は、産業合理化・緊縮財政をはかった上で金輸出解禁。加え、軍部と対立しながら軍縮政策に努めたことが有名であるが、本書では教科書等では味わうことの出来ない緊迫した昭和初期の雰囲気が、政治信条を貫いた二人の熱い友情と共に描かれている。
命を賭した政治家の姿。
昭和初期、不景気に喘ぐ日本を変えようとした「ライオン宰相」浜口雄幸と、その盟友井上準之助を描いた作品です。
質実剛健、余計なことは口に出さず厳格な印象を与える浜口と、華やかな言動ゆえに敵を作ることも多い井上。生き方も、性格も対照的な二人が、一つの信念のために共に戦っていく姿が、当時の時勢、評論、新聞記事等を織り交ぜながら描かれており、実際に昭和初期の情勢に立ち会っているような感覚を覚えます。城山三郎氏の最高傑作と謳われることも多いこの作品ですが、なるほどと思わされるものがあります。
日本に、こういう人達がいたのだということを、強烈に感じさせてくれる作品だと思います。
本懐かもしれんが
肝心の金解禁と軍縮の話が
なかなか出てこないで
首相と蔵相の覚悟ばかり
聞かされる印象は
否めない。
城山三郎の最高作品。
城山三郎作品の最高作品。
司馬遼太郎作品と同じく、史実の合間にフィクションのニュアンスを詰め込み、見事に読ませる作品に仕上げてある。
当時を振り返った大蔵省及び日銀の資料を読むと、この物語のフィクション性が湧き上がってくるのとだが、これを完全な史実と混同しかねないほどの構成力には恐れ入る。
浜口と井上のキャラクターも見事な好対照で、小説として見事としか言いようがない。
憲政政治期の金解禁論議の空気を感じさせてくれる一冊であり、戦前のデモクラシーという理念に基づいた時代における日本男子の生き方のモデルをとても魅力的に描き出した一冊だ。
秋の読書に、是非。
