レビュー(Amazon.co.jp)
『スキップ』 『ターン』に続く、「時と人」シリーズの第3弾。『スキップ』は、17歳の女子高生が、時間を超え42歳の自分自身へと乗り移ってしまうタイムトリップもの、『ターン』は、交通事故のショックで、延々と同じ時間がくり返す異世界に紛れ込んでしまう話だった。前2作はどちらかというと、時間の存在が主人公たちに苛酷な試練を与える設定なのにたいして、本書においては、時間は彼らに寛容に働いている。
『スキップ』 『ターン』に続く、「時と人」シリーズの第3弾。『スキップ』は、17歳の女子高生が、時間を超え42歳の自分自身へと乗り移ってしまうタイムトリップもの、『ターン』は、交通事故のショックで、延々と同じ時間がくり返す異世界に紛れ込んでしまう話だった。前2作はどちらかというと、時間の存在が主人公たちに苛酷な試練を与える設定なのにたいして、本書においては、時間は彼らに寛容に働いている。
太平洋戦争末期、神戸に住む女学生の水原真澄は、時局の厳しさを横目で見ながら、友人たちと青春を謳歌していた。真澄には、結城修一というほのかな恋心を抱いている少年がいる。幼い記憶にある、30数年に1度しか見られないという獅子座流星群をいつかふたりで眺めてみたいと真澄は心に期していたが、度重なる戦火がふたりを引き裂いてしまう。やがて終戦を迎え、東京オリンピック開催が近づく昭和30年代前半。小学5年生の村上和彦は、自前で小学生に絵本や児童書を貸し与える女性と知り合う。彼女こそは水原真澄だった。折りしも獅子座流星群の到来まで、あと4年と迫っていた…。
本書は、愛し合う男女がいかにしてそれぞれの想いを伝えあうかを巡る物語である。獅子座流星群の訪れを挟んで、幾たびも交錯するふたつの生命を、時間は長い長い年月をかけて見守り育んでいくのである。
最後にでてくる、「我々は死んだりしない」という言葉の奥深さに、きっと胸を締めつけられるに違いない。(文月 達)
カスタマーレビュー
おすすめ度:
前置きが長すぎた
(2008-12-07)
順番を間違えて「ターン」の前に「リセット」を読みました。
「スキップ」に感動したので、《時と人》シリーズの最後の作品を楽しみに読み始めた
のですが、前半に戦時下の女の子の日記のような回想史が続き、その後戦後の男性の
回想史が続き、読み進めるのに苦労しました。
さすが北村先生、文章力は大したもので、主人公の細やかな心情が伺えるし、戦時下って
こんな風だったんだなぁと思えますが、元々そういうお話を読もうと思って読んでいる
訳ではないので、申し訳ないのですが、途中で投げ出そうかと何度も思いました。
最後の70頁あたりの盛り上がり部分はうるうるしましたが、いかんせんその前の前置きが
長すぎて、評価が辛口になってしまいます。この本を好きな方、ごめんなさい。
「ターン」を楽しみに、シリーズをリバースします。
取材の苦労が伺えるが
(2008-12-06)
時空を超えた男女の物語…よくある設定なのかも知れないが、恩田陸さんのライオンハートのように読むのに辛い思いをしなくて済む。戦時中や昭和中期を描くために相当な取材をされたと思われ、苦労が伺える。が、穿った見方をすれば前半は殆どその取材の結果を披露したいがために綴られたような感じで、全体の流れからすれば冗長に思える。後半は若干先が読める展開ではあるが、それだけに期待を裏切らない。ちゃんと幸せな気分にさせてくれる作品。
時を超える愛
(2008-08-16)
≪時と人≫シリーズ第3弾。
時をテーマにいろいろな描き方に挑戦しているので、シリーズ間の関連は無いので、
「スキップ」「ターン」「リセット」どの作品から読んでも大丈夫。
実際私も「リセット」を一番最初に読みました。
「リセット」は、輪廻転生しても相手を想い続けるピュアなラブストーリーです。
スキップが無情に時が飛ばされてしまう、図でいえば時が一方的に直線的に流れる話で、
ターンがひたすらその場でくるくる輪を描いている話とするなら、リセットは過去と繋がりながら
記憶という輪を描きながら先へ進むようなお話です。
スキップとターンを経た作者がたどり着いたひとつの形なんだろうなと思いました。
北村薫らしい優しくて繊細な静かに時間が流れているような奇麗なお話でした。
詩情溢れる戦前の女学生の描写 北村薫の見事な文才
(2008-07-05)
「時と人」シリーズの第3弾ですが、『スキップ』や『ターン』のような緊張感や切迫感はなく、実にゆったりとした時間が流れている小説でした。戦前の芦屋に住んでいたお嬢さまの日常のように優雅な展開で、時にはまどろっこしく思う場面もあるでしょうが、これほど丁寧に戦前の女学生の心情を綴った小説は他にないと思います。
巻末に参考文献が列挙されていますが、丁寧な取材による描写がこの『リセット』の深い味わいをもたらしています。まるでその時代を生きた女学生がその時代を思い出して書いたかのような文章が北村薫の才能の表出でしょう。
戦前のドイツ映画「会議は踊る」の主題歌の♪denn jeder Fruhling hat nur einen Mai♪が通奏低音のように本編を貫いています。「だって、春に5月は一度しか来ないだろう」は第1部でも、第2部でも、そして第3部でも重要な場面で歌われます。実にキーワードのような歌でした。そしてこの曲によってそれぞれの記憶の渕からその繋がりを光明の様に見出すのです。
ザッパーの『愛の一家』にも登場し、本書でも重要な役割を果たす33年周期で見られる獅子座流星群もまた縦糸のように本書を貫いています。歯磨きも「まあちゃん」もフライ返しも東京オリンピックもまたすべて「リセット」に必要な狂言廻しのような存在です。このあたりの組み立てが実に見事で、ミステリー好きを唸らせる箇所でした。
愛の尊さを伝えた「彼のうちに、わたしも生きているのです」という言葉は泣かせます。
北村薫の「時と人」シリーズの3部作は見事な完成度を誇る作品群ですので、このシリーズの続編を望みたいものです。
悲劇的、かつ幸福
(2008-02-29)
運命というものは、変えられないものなのか?
人の一生が、不完全にリセットされ、次にバトンが渡されるが、輪廻と転生とは、少し意味が異なる。
三部構成のこの作品は、様々な時代を映す。
第一部は、一人の女学生の眼から見た、戦前と戦中だ。
その表現は、驚く程冷静で、例えば、昭和20年6月の大阪大空襲ですら、さらりと描く。
凄まじい状況が、こんなに淡々と描かれているところが、かえってリアルだ。
興味深いのは、第二部の男子小学生の行動だ。
昭和30年代の物語だが、第一部と絶妙にリンクしている。
蜂の巣に、2B弾をぶち込むという下りは、特に面白く、おばさんに対する感情の露土は、良い場面だ。
第三部は、現代を舞台とした総括だ。
ここを読む限り、本作品は、あまり悲劇的には見えない。
フィクションではあるものの、生命の繋がりという、壮大な時間と空間を感じさせる。
微妙な感情の機微を交えて、繰り返される生命が描かれる。
故意に宗教色を排除しているとも考えられ、作品の中立性が保たれている。
不思議な読後感が後遺する。
おすすめ度:
前置きが長すぎた
順番を間違えて「ターン」の前に「リセット」を読みました。
「スキップ」に感動したので、《時と人》シリーズの最後の作品を楽しみに読み始めた
のですが、前半に戦時下の女の子の日記のような回想史が続き、その後戦後の男性の
回想史が続き、読み進めるのに苦労しました。
さすが北村先生、文章力は大したもので、主人公の細やかな心情が伺えるし、戦時下って
こんな風だったんだなぁと思えますが、元々そういうお話を読もうと思って読んでいる
訳ではないので、申し訳ないのですが、途中で投げ出そうかと何度も思いました。
最後の70頁あたりの盛り上がり部分はうるうるしましたが、いかんせんその前の前置きが
長すぎて、評価が辛口になってしまいます。この本を好きな方、ごめんなさい。
「ターン」を楽しみに、シリーズをリバースします。
取材の苦労が伺えるが
時空を超えた男女の物語…よくある設定なのかも知れないが、恩田陸さんのライオンハートのように読むのに辛い思いをしなくて済む。戦時中や昭和中期を描くために相当な取材をされたと思われ、苦労が伺える。が、穿った見方をすれば前半は殆どその取材の結果を披露したいがために綴られたような感じで、全体の流れからすれば冗長に思える。後半は若干先が読める展開ではあるが、それだけに期待を裏切らない。ちゃんと幸せな気分にさせてくれる作品。
時を超える愛
≪時と人≫シリーズ第3弾。
時をテーマにいろいろな描き方に挑戦しているので、シリーズ間の関連は無いので、
「スキップ」「ターン」「リセット」どの作品から読んでも大丈夫。
実際私も「リセット」を一番最初に読みました。
「リセット」は、輪廻転生しても相手を想い続けるピュアなラブストーリーです。
スキップが無情に時が飛ばされてしまう、図でいえば時が一方的に直線的に流れる話で、
ターンがひたすらその場でくるくる輪を描いている話とするなら、リセットは過去と繋がりながら
記憶という輪を描きながら先へ進むようなお話です。
スキップとターンを経た作者がたどり着いたひとつの形なんだろうなと思いました。
北村薫らしい優しくて繊細な静かに時間が流れているような奇麗なお話でした。
詩情溢れる戦前の女学生の描写 北村薫の見事な文才
「時と人」シリーズの第3弾ですが、『スキップ』や『ターン』のような緊張感や切迫感はなく、実にゆったりとした時間が流れている小説でした。戦前の芦屋に住んでいたお嬢さまの日常のように優雅な展開で、時にはまどろっこしく思う場面もあるでしょうが、これほど丁寧に戦前の女学生の心情を綴った小説は他にないと思います。
巻末に参考文献が列挙されていますが、丁寧な取材による描写がこの『リセット』の深い味わいをもたらしています。まるでその時代を生きた女学生がその時代を思い出して書いたかのような文章が北村薫の才能の表出でしょう。
戦前のドイツ映画「会議は踊る」の主題歌の♪denn jeder Fruhling hat nur einen Mai♪が通奏低音のように本編を貫いています。「だって、春に5月は一度しか来ないだろう」は第1部でも、第2部でも、そして第3部でも重要な場面で歌われます。実にキーワードのような歌でした。そしてこの曲によってそれぞれの記憶の渕からその繋がりを光明の様に見出すのです。
ザッパーの『愛の一家』にも登場し、本書でも重要な役割を果たす33年周期で見られる獅子座流星群もまた縦糸のように本書を貫いています。歯磨きも「まあちゃん」もフライ返しも東京オリンピックもまたすべて「リセット」に必要な狂言廻しのような存在です。このあたりの組み立てが実に見事で、ミステリー好きを唸らせる箇所でした。
愛の尊さを伝えた「彼のうちに、わたしも生きているのです」という言葉は泣かせます。
北村薫の「時と人」シリーズの3部作は見事な完成度を誇る作品群ですので、このシリーズの続編を望みたいものです。
悲劇的、かつ幸福
運命というものは、変えられないものなのか?
人の一生が、不完全にリセットされ、次にバトンが渡されるが、輪廻と転生とは、少し意味が異なる。
三部構成のこの作品は、様々な時代を映す。
第一部は、一人の女学生の眼から見た、戦前と戦中だ。
その表現は、驚く程冷静で、例えば、昭和20年6月の大阪大空襲ですら、さらりと描く。
凄まじい状況が、こんなに淡々と描かれているところが、かえってリアルだ。
興味深いのは、第二部の男子小学生の行動だ。
昭和30年代の物語だが、第一部と絶妙にリンクしている。
蜂の巣に、2B弾をぶち込むという下りは、特に面白く、おばさんに対する感情の露土は、良い場面だ。
第三部は、現代を舞台とした総括だ。
ここを読む限り、本作品は、あまり悲劇的には見えない。
フィクションではあるものの、生命の繋がりという、壮大な時間と空間を感じさせる。
微妙な感情の機微を交えて、繰り返される生命が描かれる。
故意に宗教色を排除しているとも考えられ、作品の中立性が保たれている。
不思議な読後感が後遺する。
