沼地のある森を抜けて - 和書 - 子供と読む絵本の旅
梨木 香歩

新潮社

グループ:Book /ランキング:49715
価格:¥ 1,890
発売日:2005-08-30 /通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
壮大にして矮小なSF  (2008-07-15)
 不思議なぬか床から始まるこの物語が、細胞が永遠に己という生を繰り返す分裂を止めて死と交わって有限の生をリレーして生きることになったのかという、人類の発生から滅亡にいたる壮大にして、結局は個人的な関係で生殖するという矮小さに収束する話で、その筆の奔放さには驚嘆を禁じえません。なぜこの書き出しでファンタジックな閉鎖世界に生きる少年の物語やら孤島のサバイバルまで筆が及ぶのか。
 最後は結局そこか…、と嘆息しましたが、しかもダブルでくるし、そこまでは本当に胸躍る間違うかたなきSFでした。この物語に漂ってるのは一貫して陰の、すなわち女性の論理であり価値観であり世界観でありそして都合という一見してとっつきにくい感じが拭えないとは思いますが、滅亡テーマのSF好きな方にこそ読んで欲しい作品だと思います。

梨木さん、進化する作家  (2008-07-03)
 読みながら何回も、だれの本だっけと思った。いい意味で、ごく自然に進化を遂げた作品だ。「ぐるりのこと」で、どんなことを考えながら暮らしている方なのか漠然と知ってはいたが、こう来るとは思わなかった。わけがわからなくなった(笑)分、少々鼻についていたお説教くささが抜け切って、でも「家守」や「村田エフェンディ」とも全く違う新境地。うまく表現できないが、読み終わった後、風の音だけが耳に残るような、そんな作品だ。
 それにしても、皆さんの分析は、どれもすごい(褒め言葉です)。ひたすら雰囲気を味わい、夢の世界を彷徨い続けた後の心地よい疲労感に浸るのが楽しみ、という私は、ただただ脱帽するばかりだ。

小説というジャンルを超える  (2007-12-16)
「西の魔女が死んだ」を読み梨木さんの著作に興味を覚えた。
読み終えて最初の感想は凄いの一言である。
長編小説と言う分類が正しいのか?
誤解を恐れずに言えば、生命哲学がまずあり、生物学、心理学、民俗学、生態人類学、進化学そして地球環境学等々。
「僕」の存在が名前を得て行く過程などはまさに哲学的存在論であり、ヌカ床と沼地は「心脳問題」の本質だろう。ヌカ床から生まれ出る存在は記憶であり、その実態は学習や経験からの記憶ではなく生まれる前から存在する記憶でもあるのだろう。
クライマックスに登場する島、そして森、海はまさに「僕」でもあり「地球」でもあり、「宇宙」でもよい。細胞壁あるいは生体膜に区切られている存在が交わり時に新たな出発(進化)をする。
それは単に人間と言う種だけの問題で無い事を複雑系である森(環境)を通して、全ての生物と非生物の折り合いという混沌の中にいる「僕」を表現している。

同じ歳の作者のあまりにも凄い才能と洞察そして思索に嫉妬を超えた感情を覚えた。

解き放たれてあれ 、という願い  (2007-09-03)
しみじみとした充実感で読み終わった本を閉じた。人間存在の不可思議と不条理が、酵母や菌類などの命のなりたちを背景に幻想的に語られる。女が担ってきたぬかみそという日常の食をめぐる営みから、命の連鎖と意識のありかの不可思議を語っていく細部、SF的な異次元の世界の物語をはさむことで、私たちの存在の不確定さも際だつ。そして上淵久美という研究者や、男性性を否定して生きて生きたきた風野さんという人物も好ましい。また最後のセックスの描写の美しさは極上のものだった。
読後少しして、10代の頃に時間を忘れて読んだ、アシモフの「銀河帝国の興亡」を思い出していた。
でも、この作品にはちょっと別の祈りが感じられる。生まれ出る命に希望が託されていること、命の流れの最先端のいうことばに一条の光がある。


生きる原点に立ち返る  (2007-08-30)
はじめ読んでいて「ぬかどこ」から!?
と少し怖かったが、物語も佳境へと読み進めると、梨木香歩さんの神秘的な展開に惹かれました。

全ては細胞からなんだ!!と、生きる原点に立ち返るような何かを強く感じさせられました。