レビュー(Amazon.co.jp)
何か、おはなしがこれから始まりそうなタイトルの詩集である。著者は、『永遠に来ないバス』で1997年度現代詩花椿賞を、『もっとも官能的な部屋』で99年度高見順賞受賞の、注目の詩人。初のエッセイ集『屋上への誘惑』でも、2001年度講談社エッセイ賞を受賞した。
詩の入り口はさり気なく、しかしありふれた日常の風景を、あらためて鮮やかに立ち上がらせている。言葉は的確で、しなやかだ。
何か、おはなしがこれから始まりそうなタイトルの詩集である。著者は、『永遠に来ないバス』で1997年度現代詩花椿賞を、『もっとも官能的な部屋』で99年度高見順賞受賞の、注目の詩人。初のエッセイ集『屋上への誘惑』でも、2001年度講談社エッセイ賞を受賞した。
「男たち」「女たち」「水源へ」と章題のついた3つのパートから成るこの詩集の冒頭は、「男たち」という詩。小田急線の電車の中から見た、ボクシングジムの情景が写しだされる。
暗い夜のなかで
桜色の筋肉が
黙って花のような汗をかいている
闘う、というその姿勢に
私は何かを思い出しそうになり
思い出しそうになって
ついにわからない
詩の入り口はさり気なく、しかしありふれた日常の風景を、あらためて鮮やかに立ち上がらせている。言葉は的確で、しなやかだ。
ちょっと変わったタイトルの「深い青色についての箱崎」という詩は、小説仕立て。箱崎一郎という名前の男が登場する。ある日彼は駅前で友人を待っているとき、花壇の青い花に目が留まるや、不意に泣き出したいほどの悲しみに襲われる。詩はそのまま箱崎のストーリーには収まらず、後半は青色についてのエッセイになって、著者自身の青にまつわる思い出や思索の方向へと、虚構ないまぜの連想が広がる。ストーリーに縛られないその言葉の躍動が、自由でたのしい。
従来ある文学のジャンル分けが崩れてきている現在だが、本書も、小説とエッセイと詩の魅力が1冊で味わえる、そんな詩集である。(中村えつこ)
