だりや荘 (文春文庫) - 和書 - 子供と読む絵本の旅
井上 荒野

文藝春秋

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価格:¥ 570
発売日:2007-08 /通常4~6日以内に発送

カスタマーレビュー
おすすめ度:
現実感の希薄さを泡沫として読めるかどうか  (2008-09-10)
田舎での逢瀬は近隣のホテルを使ってはいけないという大鉄則を守っていない分、各場面の現実感のなさが気になって「作者は都会でしか暮らした事がないのだろうか?」などと余計な事を考えてしまう。情事(著者がどう描こうと客観的に)を泡沫として捉える事が狙いなら、もう少し叙情的に書くべきで、同じ著者でもいっそのこと「潤一」の方がスッキリしている感じがした。こういう表現方法は、曲解してなければヨーロッパあたりの映像作家に任せるべきかなあと。「業」への踏み込みが垣間見える分、その深度の足りなさが「甘さ」になって、なんだか少女(女)コミックの読後感に似ている気がしました。直木賞作は未読なので、筆力はなんとも言えませんが、あと1作読んで同じ感想なら、しばらくは読まないです。

買いですが・・・。  (2008-08-28)
これから良い作品をどんどん書いていく予感を感じさせられました。ただ、本作については、巧みな筋立てであることは認めますが、登場人物同士を関係付けたりつなぎとめたりする接着剤のようなものにいつも性行為が用いられるので、読んでいていい加減ウンザリでした。そりゃそうかもしれませんが、すこし安易すぎませんか。それと、章段内の小段落の終わりの一行が必ず、謎かけや種明かしになっていて、もちろん読ませる工夫には違いありませんが、こう繰り返されると、飽き始められたお笑いコンビの決め台詞みたく、「なんだかなぁ」と辟易してしまいました。また、二人姉妹は姉がおっとりした物静かな美人で、妹は対照的な活発なタイプでないとダメなのでしょうか。これも、読者をバカにしているように読めば読めるような気がします。ただ、こうまで書いたあとで取ってつけたようですが、読ませるツボを心得た文章と物語を展開させていく力量には、確かな手ごたえを感じるので、これ以外の作品も読んでみる価値のある作家であるように思います。しかし、直木賞を取ったというだけで手に取った本書は、その表紙と題名からもっとほのぼのした物語かと思ってましたが、読み終わって改めて表紙の絵を眺めてみると、同じ絵が読む前とは違ってまるでそれが箱庭のように見えるのですから、やはり力のある人なのでしょう。

男を媒介にした姉妹愛  (2008-08-19)
 少女コミックの人物を髣髴させる美男美女。ペンションを舞台の恋愛劇。いつもなら数ページ読んで止めてしまうのだが、だんだん引き込まれていった。姉妹が同じ男を愛するというパターンは、小説でもコミックでもよく見かけるが、セックスで二人の心をつかんでいると思っている妹の夫が滑稽に見えてくる。
 ここには生活感とか生活臭といったものはない。常に収支を計算しながら商売するといった常識も、脇に寄せられている。お客には不自由していなそうだ。作者はなにが書きたかったのだろうか?私には、姉妹の絆の強さ、お互いを思う気持ちを書きたかったのではないかと思う。
 姉は自殺しようと考えて山中に向かう。妹をこれ以上傷つけたくはない、しかし、男なしには生きられないと考えているから。妹は姉の自殺未遂を知り、夫などいなかった日々に戻ればよいと考える。性にたいする男と女の受けとめ方の違いが、よく描かれている。
 しかし、なにか物足りない。生活臭を出せていないことが、弱点になっているように思えるのだが。

エロいシーンはぜんぜんないのに、エロティック。  (2008-01-23)
山奥でペンション・だりや荘を経営する、美貌の姉妹と妹の夫。
いびつではあるが、バランスのとれた正三角形だったはずなのに、それは少しずつ哀しくなってゆく・・・。

美人ではかなげで病弱な姉・椿。
元気で無邪気で愛らしい妹・杏。
そして、にこやかで精悍で男前な迅人。

少女漫画のように、できすぎた登場人物たちだが、みんな魅力的で、好感がもてる。
逆に、作りものすぎるような人々の物語だからこそ、現実感のあるようなないような、危うい、「舞台のような」世界を生みだし、より「愛」の存在を引き立てているのだと思う。世俗的な瑣末なことにとらわれない、「愛」だけで成り立っている世界。

迅人のキャラは、女心のツボをつく。
身勝手で残酷。なのにすごくすごく惹かれてやまない。こんな人が身近にいたら、むかつくバカ大嫌いと言いながら、はまってしまうに違いない。
「雄」の見本のような人だと思う。ハーレムの王のような。

背徳的で、しかも行き場を失うくらいに突出してしまった「愛」。人を幸福にし、満ち足りた気持ちにさせるはずであるものが、人を壊し、不幸にしてしまうこともある。それはとても不吉で、もどかしく、官能的で、心をひっかく。

山荘での、美貌の男女の恋愛物語という点では、小池真理子の何編かの作品を彷彿とさせる。

だりや荘という舞台でおきる物語  (2007-09-01)
だりや荘というペンションで起こる物語。ペンションという、ある種隔離されている世界で男女の関係を浮かび上がらせる物語。そこは荒野さん、このような物語を書かせたら、うまいです。ある種特殊な空間で成長する人間の物語。愛憎と血、憎しみと様々な要素が盛りだくさん。血が繋がっているからこその、残酷な生活。血が繋がっているからこその新渡戸さんの事件。隔離されているからこその濃くなる一方の濃度。その濃度が濃くなれば濃くなるほど、その事象は、危ういだけに、周りにまで香を届けていく。その濃度を上手く作者は物語として昇華させた。