カスタマーレビュー
おすすめ度:
大人っぽい!渋い!
(2004-10-09)
大人の世界の、暗く、汚れているからこその美しさを、いろんな要素を絶妙に組み合わせてあざやかにとらえた本だと思います。
例えばまず、季節は夏。期待と倦怠の両方が、特に濃い季節。
そんな季節に主人公たちは、保護者なしで、外国のホテルにいなくてはならないはめに。まわりはみんな、外国人、外国語。
旅行先はフランス。夏の強い日の光、若い旅行者の憧れと心細さのこもった目、それらを通してみるフランスは、特別スリリングで、猥雑で、美しいです。
そんなフランスでも、幅広い年齢の兄弟姉妹の下のほうは、道でアイスを食べたり、遊んだり、無邪気に夏を過ごします。その一方で、まわりの大人たちは、一番上の姉をまきこみながら、まるで違う夏を過ごしている。この、大人たちが過ごす夏の部分が、二十代後半の私が読んでも、すごく大人っぽくてかっこいいです。中心になっているのは、愚かで一途な女と、レズビアンらしき年上の女、後ろ暗い秘密のある男、気位の高い美少女、この四人の感情的な争い。恋にすがる女の無様な姿、軽蔑の表情を浮かべる美少女、誘惑、裏切り、屈辱、復讐。無邪気なこどもの風景と並行して書かれているせいで、余計にその暗い美しさ、汚れた魅力が引き立ちます。
語り手の、上から二番目の女の子がまた、いい。大人たちの欲望を理解できる一方で、彼女自身はまだ大人の欲望から自由。だから、大人を見る目がすごく敏感で冷静。冷酷と言ってもいいくらいです。その一方で、劣等感や不安やさみしさに揺れ動いている。
素敵な本です。児童書ですが、大人にも、いや、大人や大人になりかけの人にこそ、おすすめです。
13才の夏
(2004-08-21)
ゴッデン本人の体験に基づいた作品。『子供』だけでフランスのひと夏を過ごす解放感と、変化してゆく周囲や自分自身に対するとまどい・・・いつまでも子供でいたいと願いながらも、大人の世界に順応しつつある姉を軽蔑し、嫉妬する主人公の心情がことこまかに描かれている。大人になったゴッデンは、どのような気持ちで13才の自分を見つめ、描いたのだろうか。
「人形の家」作者の自伝的な小説。
(2001-11-24)
母の病気のため異国のホテルに取り残された5人きょうだい。よそいきの服が学校の制服というような家庭の子供たちを、ホテル側はお客扱いしてくれない。食事は従業員と。昼間は建物から追い出され、監督する者もないかわりにお小遣いもなく、庭のすももを食べすぎてはおなかを壊す日々。そしてきょうだいはその夏、忘れられないある「事件」に巻き込まれる。
おすすめ度:
大人っぽい!渋い!
大人の世界の、暗く、汚れているからこその美しさを、いろんな要素を絶妙に組み合わせてあざやかにとらえた本だと思います。
例えばまず、季節は夏。期待と倦怠の両方が、特に濃い季節。
そんな季節に主人公たちは、保護者なしで、外国のホテルにいなくてはならないはめに。まわりはみんな、外国人、外国語。
旅行先はフランス。夏の強い日の光、若い旅行者の憧れと心細さのこもった目、それらを通してみるフランスは、特別スリリングで、猥雑で、美しいです。
そんなフランスでも、幅広い年齢の兄弟姉妹の下のほうは、道でアイスを食べたり、遊んだり、無邪気に夏を過ごします。その一方で、まわりの大人たちは、一番上の姉をまきこみながら、まるで違う夏を過ごしている。この、大人たちが過ごす夏の部分が、二十代後半の私が読んでも、すごく大人っぽくてかっこいいです。中心になっているのは、愚かで一途な女と、レズビアンらしき年上の女、後ろ暗い秘密のある男、気位の高い美少女、この四人の感情的な争い。恋にすがる女の無様な姿、軽蔑の表情を浮かべる美少女、誘惑、裏切り、屈辱、復讐。無邪気なこどもの風景と並行して書かれているせいで、余計にその暗い美しさ、汚れた魅力が引き立ちます。
語り手の、上から二番目の女の子がまた、いい。大人たちの欲望を理解できる一方で、彼女自身はまだ大人の欲望から自由。だから、大人を見る目がすごく敏感で冷静。冷酷と言ってもいいくらいです。その一方で、劣等感や不安やさみしさに揺れ動いている。
素敵な本です。児童書ですが、大人にも、いや、大人や大人になりかけの人にこそ、おすすめです。
13才の夏
ゴッデン本人の体験に基づいた作品。『子供』だけでフランスのひと夏を過ごす解放感と、変化してゆく周囲や自分自身に対するとまどい・・・いつまでも子供でいたいと願いながらも、大人の世界に順応しつつある姉を軽蔑し、嫉妬する主人公の心情がことこまかに描かれている。大人になったゴッデンは、どのような気持ちで13才の自分を見つめ、描いたのだろうか。
「人形の家」作者の自伝的な小説。
母の病気のため異国のホテルに取り残された5人きょうだい。よそいきの服が学校の制服というような家庭の子供たちを、ホテル側はお客扱いしてくれない。食事は従業員と。昼間は建物から追い出され、監督する者もないかわりにお小遣いもなく、庭のすももを食べすぎてはおなかを壊す日々。そしてきょうだいはその夏、忘れられないある「事件」に巻き込まれる。
語り手の「わたし」の13歳という年齢はちょうど思春期にあたります。物語の中盤から子供っぽい遊びの記述は影をひそめ、下働きの少年との微妙な関係が語られます。ストーリーの中心となる「事件」だけでも一冊の小説になったかもしれませんが、この「わたし」の子供時代の終わりと、才色兼備の16歳の姉に対する羨望、フランスの田園の夏の光景!!、個性的なきょうだいやホテルの人々の生態など、さまざまな描写が盛り込まれて作品に奥行きを生み出しています。奥行きありすぎてどこが中心なんだか...
そういう意味で文学的な作品です。「わたし」と同じ年頃で読むよりも高校生ぐらい、思春期のいわば山場を過ぎてから、読んだほうがぴんとくるのはないでしょうか。
