全集・選書 - 和書 - 子供と読む絵本の旅
須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)   須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)
須賀 敦子
河出書房新社
おすすめ度:
価格: ¥ 998
円 (税込み)
たまらないほど素晴らしい、今そう思わせる一番の作家
 短編集「停電の夜に (新潮文庫)」、そして長編「その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)」に続く、ジュンパ・ラヒリの最新作です。短編と連作中篇を集めた一冊で、今年(2007年)7月にフランク・オコナー賞を受賞したとのこと。
 ジュンパ・ラヒリの作品は間違いない。そして継続して翻訳を担当してきた小川高義氏の筆遣いも間違いない。私のそうした期待と信頼を全く裏切らない仕上がり具合に、大いに満足しました。

 ラヒリの作品ですからもちろん主人公の大半はベンガル系インド人のアメリカ移民二世となります。しかし、本書所収の最初の作品で表題作でもある「見知らぬ場所」は、その「ベンガル系インド人のアメリカ移民二世」の物語であることをことさら感じさせることなく読者をすっと物語世界へいざなっていきます。
 妻を亡くした老父をひとり東海岸の街に残し、今は夫と子どもとともに西海岸の街に暮らす娘。核家族や世代間格差、高齢化社会、そして老親の再婚と、舞台が日本であってもさほど違和感のないテーマが散りばめられ、それを小川氏の巧みな翻訳の力によって日本語で読むことが可能になって、この作品は読者の前に普遍的な現代の物語として立ち現れてくるのです。

 本書所収の物語たちが共通して持つのは、些細で平凡に見える人生に潜む小さな秘密です。
 学校教育を経て社会に独り立ちした人間は、そこで初めて線路の敷かれていない人生を切り拓いていくことになります。教科書も参考書もない人生という海をどう泳いでいくか。
 海原で人間が抱えるウソや隠し事は、時に浮き輪の役目を果たすこともあれば、重石となってしまうこともあります。
 そんなウソや隠し事の割り切れない苦くも甘い味を、ラヒリの紡ぐ物語はたまらないほど見事に提示して見せてくれるのです。心がざわつかずにはいられません。

 次回作が一日も早く読みたい。
 ジュンパ・ラヒリは、今わたしに一番そう思わせる作家です。

見知らぬ場所 (Shinchosha CREST BOOKS)   見知らぬ場所 (Shinchosha CREST BOOKS)
小川 高義(翻訳)
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 2,415
円 (税込み)
須賀敦子全集 第2巻 (河出文庫)   須賀敦子全集 第2巻 (河出文庫)
須賀 敦子
河出書房新社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,050
円 (税込み)
素晴らしい短編 アリステスさんはかなりの寡作な方で31年で16篇の短編と1つの長編を出しているだけだそうです。

短編の舞台はほとんどどれも、カナダにある小さな島を舞台にしています。そしてそこに息づく自然と人間と動物、そして起源である先祖のハイランダー、スコットランドについてと、その言葉であるゲール語に重みを置いた小説です。「島」はアリステスさんの中でも完成度が高い短編だと思いますし、好きな話しです。北国の寒い環境と人間の業のようなものと歴史と起源などを織り交ぜた静かだけれど激しい(矛盾した表現なのですが、私にとってはまさに静かだけれど激しいとしか表現しようのない)素晴らしい小説でした。 何故か私にはガルシア=マルケスが思い出されるほどスケールが大きく(もちろん良い意味で)、それでいて小さなささやかなものにも温かみのあるまなざしを向けられているレイモンド・カーヴァーのような(もちろん良い意味です)愛着も感じられるのです。そして人間ではない生き物がどの短編にも重要な役割を与えられていて、動物好きな方にもオススメです。短編好きな方には是非。


好きな作品は表題作子供の頃の犬との思い出がよみがえる「冬の犬」、男と大きな灰色の犬をめぐる伝説「鳥が太陽を運んでくるように」、子供の頃に聞いた話しが不思議な重なりと光を当てられる「幻影」、燈台守としての一生を送ることの物語「島」です。


しかし中でも私個人が最も気になった、皮膚的にショックな作品は「完璧なる調和」です。無骨で不器用な男の孤独、それも手に入れた幸せを失ってからの孤独と、伝統と詩と歌声、それに関わる親戚とささやかな喜び。どの短編も非常に上手いですし、綺麗でスタイルもありますが、私にとってのこの「完全なる調和」は他のどの作品よりもずば抜けてよかったです。他の人がどう感じるかは分かりませんが、とてもショッキングな、忘れられない短編でした。



短編小説が好きな方、動物が出てくる物語が好き方に、オススメ致します。
冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)   冬の犬 (新潮クレスト・ブックス)
中野 恵津子(翻訳)
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,995
円 (税込み)
海と結ばれた栄光の都市国家千年の興亡史。ここから日本が学べることは。。。 以前に「文芸春秋」に、”有力者のえらんだ日本のわかいひとたちにおすすめの歴史書”、みたいな特集があり、トップ3にはいっていたのです。それで初めてよんだのですが。。。

日本とおなじように海洋国で、貿易により繁栄を築いた栄光の国、ヴェネツィアの興亡史。強烈におもしろく、一気に読ませていただきました。

フン族の王アッテイラの攻撃から都の形成、貿易の成功による経済大国としての繁栄、途中でレパントの海戦やコンスタンティノープルの攻防を含む十字軍の戦いのサブストーリイも魅力的で、そして政治・外交能力の低下とともに影響力が下降してついにせめ滅ぼされるまでの壮大な歴史絵巻。

ヴェネツィアの成功の歴史は実に、戦後から近年までの日本と酷似しているのです。国家の原動力は強力な経済の活気であり、そしてともに海洋国家で大海という天然の国境に守られていましたが、ともに同じ運命を歩みかねないのではないか。。。少々心配になります。

日本人の先輩たちがこのくにの未来を背負うこれからのかたがたにぜひよんでほしい、と選んだのは同感で、よくわかります。名著であり、星5つ、絶対のおすすめ歴史モノです。



海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (塩野七生ルネサンス著作集)   海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (塩野七生ルネサンス著作集)
塩野 七生
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,995
円 (税込み)
記憶に残っていること―新潮クレスト・ブックス短篇小説ベスト・コレクション (Shinchosha CREST BOOKS)   記憶に残っていること―新潮クレスト・ブックス短篇小説ベスト・コレクション (Shinchosha CREST BOOKS)
堀江 敏幸(編さん)
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,995
円 (税込み)
この授業を受けてみたかった  大学での講義からの抜粋という形だが、聴講した学生が羨ましくなる内容だ。もともとが話し言葉であるだけに、ひとり突っ込みや、話の脱線、学生とのコール・アンド・レスポンスなどライブ感に溢れているのも楽しい。  この面白さは、@興味の対象と講義の内容が合致している、A座学だけではなく演習が混じっている、Bフィードバックがある、C現役の作家に対する興味、で構成されていると思う。
 @は大学の授業だと当たり前のようだが、実際には基礎や一般教養などで必須科目だから受講する場合も多いと思う。Aは耳学問だけの頭でっかちを防ぐ意味でも重要だ、Bは参加意識や、個人的なモチベーションの向上に不可欠、Cは世俗的な興味で、このスパイスにより単調になりがちな講義にアクセントが加わると思う。
 このように講義の好例としての意義も深いのだが、一番の収穫は読解や創作の解答に幅を認めているところではないかと思う。これは受験時代とは大きく異なるところだ。
 最後の第17章はそれまでとやや趣が異なる。しかし「分かるということ」とその悲劇、そして「読むことが書くことと表裏一体の表現である」という結びは感銘すら覚える結びである。

北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)   北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)
北村 薫
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,365
円 (税込み)
塩野女史のベネツィアへの愛情がこの本の魅力です 私の敬愛する竹田青嗣氏によれば、世の中の価値観は「真・善・美」に集約されるという。

この考えが正しいのであれば、歴史の場合、「善・悪」の価値観で評価するのではなく「真・偽」の価値観で認識すべき「事象」のように思う。

「情」と「理」の対立軸でいうならば、「情」で評価するのではなく、「理」で評価すべきなのではということ。

塩野女史の著書を通読していると、彼女の歴史観というのは、、常に「善・悪」や「情」でなく、「真・偽」及び「理」の視点で認識しようとする姿勢があり、非常に気に入っている。

しかしながら、塩野女史は、「善・悪」で評価はしないものの、「好き・嫌い」で評価しているところは読み手も共感できるところだ。本人も言及している「カエサル」好きはともかく、「ヴェネツィア」に対する彼女の愛情はこの著書を読みながらひしひしと読者に伝わってくる。

下巻の394ページより、
「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネツィアのように、優雅に衰えたいものである。そして、ヴェネツィアが優雅に衰えられたのは、ヴェネツィアの死が、病気や試練をいく度も克服してきた末に自然死を迎える人間の、死に似ていたからではないだろうか。」

あらゆる苦難を国民の団結と知恵で切り抜けてきたヴェネツィア。私はこの「第13話 ヴィヴァルディの世紀」の最後に記されたこの文章を繰り返し読みながら、すっかりヴェネツィアの虜になってしまった。
海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)   海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)
塩野 七生
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 2,100
円 (税込み)
復讐に燃える父親は最高の俗物、娘はおっとりのお嬢様  身分の高い人間が魔女について魔法を身につけるという話はあまりないと思う。普通は王にはなれない立場の人間が力を手に入れるために魔法を身につけて、世界を制覇しようとするような外に向かっていく物語が多い。この作品でも、流された身の王が復権と復讐のために魔法を身につけるのだが、復讐の仕方がなんかせこい。孤島に誘い込んでゆっくりといたぶるというのは大人げないとも言える。しかもシェイクスピア作品の例に漏れず言動は罵詈雑言、極めて俗物なのである。それを取り巻く魔法遣いの弟子や仇敵達も良い勝負の下品さが全開で、復讐譚の人情話の思い入れがなかなか湧いてこない。
 芝居を見物していたのは庶民達だったのか、支配者階級もいたのか分からないが、どちらの立場で見ても爆笑であったことは想像に難くない。しかも物見高い見物人をも「乞食には施さないが、死んだインディアンの見物には金を払う奴ら」と揶揄してしまうところは人気劇作家であったシェイクスピアの真骨頂と言えるのではないだろうか。
 
テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)   テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)
ウィリアム シェイクスピア
William Shakespeare
松岡 和子
筑摩書房
おすすめ度:
価格: ¥ 714
円 (税込み)
批判的知性の試金石 「こんど、家来の角右衛門が日本へ帰るので、テルマとカクセイをお土産に届けさせた。無事に着いただろうか。そのうちコカクセイ一人は娘にやってほ しい。私も戦場で十一歳の子どもを手に入れ(求め)て召し使っているが、ひどい病気もちで困っている。いずれ娘にもテルマを一人、手に入れ(求め)て贈ろう。また拾左衛門尉殿にも下女にでもできそうな子を一人、手に入れ(取り)て、次のお土産にしよう。ただ、いまは加徳カドクという島の暮らしで、食べるのがやっとだから、そのうち手の者をやって、手に入れたら(取り候わば)送りたい・・・。」本書、pp.62-63
 これは、外国出張しているお父さんから家を守るお母さんへの手紙の一節である。時は今から400年前、慶長二年(1597)。差出人は、島津家家来で小身の武士、大嶋忠泰。受取人は、国元の妻(内方・宿本)。差出地は、再侵略真っただ中の朝鮮半島の戦場。
 この藤木の書は衝撃的な本である。旧版は1995年に出ており、その後新たに確認できた史料を付け加えた新版がこれだ。上記は、朝鮮半島における秀吉軍の奴隷狩り戦争に関するものだが、驚くべきは、これが、日本国内の戦場における普遍的な習俗の国外持ち出しであること。
 つまり、私にもあなたにもどこかの歴史的段階で、戦場の戦利品としての奴隷の血が流れている可能性もあるわけだ。美醜善悪を含め、己の歴史的来歴を知るために必ず読むべきである。この事実を冷静に受け止めることができるかどうかが、その者の批判的知性の有無をあぶり出すであろう試金石の書。
【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777))   【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777))
藤木 久志
朝日新聞社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,365
円 (税込み)
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