井上 荒野 - 和書 - 子供と読む絵本の旅
愛する妻を見守る夫の物語 一番心に残ったのは主人公のセイの夫である。セイの心の動きを本人以上に全て敏感に感知していたのは夫ではなかっただろうか。石和の存在により、セイの心の中に立った小さな波に気づく。ただ、それを本人に問い詰めることはしない。ただ、見守る。大きくならないよう念じながら見守る。ただ、見守るだけ。東京での打合せもそこそこに予定より早く戻ってきてセイを見守る。

夫にとって一番の試練は、亡くなったしずかさんの遺品の整理にセイが向かったときである。そこには小学校を辞めて行方不明になった石和が来ているであろうことをなぜかセイは予感していた。夫も自分から離れていくセイを追って、故しずかさん宅に向かう…。しかし、セイは現れた夫にを残して、石和とある場所に向かう。そこがこの本のタイトルでもある“切羽”である。帰ってこないかもしれない妻を気をもみながら待つ夫の気持ち。“あのとき夫は、床にぺたりと座り込み、私たちが放り出していった作業を一人黙々と続けていたのだ”という切羽から夫のもとに帰ってきたセイの回顧シーンに現れている。戻ってきた妻が自分を呼ぶ声に、夫は振り返り、“ああ、戻ってきたとね”と妻に微笑するのである。

そして、最後に石和が島を出て行くのを、一人で見守り、そっと祝杯をあげる。

そんな愛する妻を見守る夫の物語は、淡くかすかだが、確かに張り巡らされた伏線から読み取ることができる。セイが切羽から引き返してくることができたのはこの夫ゆえなのだろうか。
切羽へ   切羽へ
井上 荒野
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,575
円 (税込み)
こんな女性いるのでしょうか? 美貌でオシャレで料理上手、家族への慈愛に満ちている。ここまでは「いるかもしれない、こんな人。」という感じですが、嫉妬せず自由恋愛さえ許し、認めてくれる・・これって男性の描く理想の妻像では?でも不思議なことに著者は女性・・。

クールすぎて一般女性には感情移入しにくい主人公ですが、読み物としては確かに面白かったです。
誰よりも美しい妻   誰よりも美しい妻
井上 荒野
マガジンハウス
おすすめ度:
価格: ¥ 1,575
円 (税込み)
ひどい感じ―父・井上光晴 (講談社文庫)   ひどい感じ―父・井上光晴 (講談社文庫)
井上 荒野
講談社
おすすめ度:
価格: ¥ 520
円 (税込み)
物語の擬似性さえも疑わせる気ままな主人公 潤一という26才の青年が主人公の、女性関係観察抒情詩的な短編集。
いろいろな年齢層・立場の女性と「関わり」を持っていく話なのですが、
各話で、何らかの形で纏わりついてくる嫌悪感と、「あるよな、そういう
感情って」というシンクロ感の割合が、前者が大きく勝つものと、後者が
大きく勝つものに分かれています。
それを最後の一編が中和させる構成になっていますので、短編集としての
纏まりを最後に紐閉じした感じの本かな、と感じます。
好き嫌いが分かれると思いますが、紅茶でも飲みながら、サラッと1編
ずつ読んでいく感じが似合う本かと思います。

潤一 (新潮文庫)   潤一 (新潮文庫)
井上 荒野
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 420
円 (税込み)
せつないの。。 なにがせつないって、内容というよりも、作中に全体に漂う雰囲気が。
二人の女の何気ない日常が。しぐさが。息遣いが。言葉がせつないんです。

他の方も書かれてますが、とにかく大人。
どこがどうという内容にもかかわらず、入り込めてしまう。
著者の卓越したセンスと力量を感じた。
もうこの人のなにげ無い言葉の選び方にいちいちやられてしまう。


読み終えると胸が苦しいような余韻がしばらく残ります。

「歳さんはどこの人?」

「歳さんはここの人」

読み終えた時に、自分が井上荒野の世界に酔ってしまっていたことに気付く。
大人っていいな、素敵やん。。って思える作品。
もう切るわ (光文社文庫)   もう切るわ (光文社文庫)
井上 荒野
光文社
おすすめ度:
価格: ¥ 500
円 (税込み)
老成した筆致は非常に素晴らしい 「食欲→食事→性欲」という緩い関係性を軸に、
組み立てられた九篇の短編集。

一つ一つの短編には味わい深いものがあるが
ほとんど全て不倫絡みというのでは
後半、同じ展開にやや飽きが来る。

淡々とした中の、しかし心の機微に触れる
老成した筆致は非常に素晴らしい。
ベーコン   ベーコン
井上 荒野
集英社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,470
円 (税込み)
小説のテクニックを見せつける連作短篇  メリーゴーランドのように、脇にいた人物がつぎつぎと主役と入れ替わっていく。それは見事なつくりだと思う。しかし、おもしろいんだけど、感動には至らない。
 ちょうど、西洋庭園の中にいるような馴染めない感覚が残る。きれいなんだけど、あまりに人工的なつくりにしっくりこないような。精神の病を抱えているような主人公と野次馬根性旺盛な脇役たち。このシチュエーション自体型にはまりすぎているからかもしれない。
しかたのない水 (新潮文庫)   しかたのない水 (新潮文庫)
井上 荒野
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 460
円 (税込み)
現実感の希薄さを泡沫として読めるかどうか 田舎での逢瀬は近隣のホテルを使ってはいけないという大鉄則を守っていない分、各場面の現実感のなさが気になって「作者は都会でしか暮らした事がないのだろうか?」などと余計な事を考えてしまう。情事(著者がどう描こうと客観的に)を泡沫として捉える事が狙いなら、もう少し叙情的に書くべきで、同じ著者でもいっそのこと「潤一」の方がスッキリしている感じがした。こういう表現方法は、曲解してなければヨーロッパあたりの映像作家に任せるべきかなあと。「業」への踏み込みが垣間見える分、その深度の足りなさが「甘さ」になって、なんだか少女(女)コミックの読後感に似ている気がしました。直木賞作は未読なので、筆力はなんとも言えませんが、あと1作読んで同じ感想なら、しばらくは読まないです。
だりや荘 (文春文庫)   だりや荘 (文春文庫)
井上 荒野
文藝春秋
おすすめ度:
価格: ¥ 570
円 (税込み)
死の淵 行き詰った仕事、崩壊した夫婦生活、セックスの道具としてただ利用されるだけの不倫関係、不治の病。
街でさまよううちに出会う男の子や老女たちにも死の臭いがただよっている。
ここまでのどん底でも、あきらめの中に、未来への静かな好奇心が、物語を前進させる。
結末はあっけにとられたが、作者にはいつかもう一度取り組んで欲しいテーマかもしれない。
ヌルイコイ (光文社文庫)   ヌルイコイ (光文社文庫)
井上 荒野
光文社
おすすめ度:
価格: ¥ 480
円 (税込み)
中途半端な童話  ママと愛人の対面を避けてしまったのはなぜか?
 どうせなら魔法を使ってでも、二人の精神分析をやってもらいたかったですね。
 著者の母のファンを何人か知るものにとっては、「ママ」をもっと母に近い性格にすればよかったのにと残念でならない。
森のなかのママ (集英社文庫)   森のなかのママ (集英社文庫)
井上 荒野
集英社
おすすめ度:
価格: ¥ 580
円 (税込み)
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