北村 薫 - 和書 - 子供と読む絵本の旅
ミステリというよりファンタジーに近い作品 鏡の国で繰り広げられている野球の負け残り戦をやめさせるべく奮闘するアリスの姿が丁寧に描かれていて読みやすかった。特にアリスと五堂くんの言い争いや、五堂くんがアリスを侮辱されて怒るシーンがよかったと思う。ただ、ミステリというよりファンタジーに近い作品だったため、ミステリを期待していた私には物足りなかった。
野球の国のアリス (MYSTERY LAND)   野球の国のアリス (MYSTERY LAND)
北村 薫
講談社
おすすめ度:
価格: ¥ 2,100
円 (税込み)
青春の光と影 「街の灯」の続編にして、ベッキーさんと英子シリーズ第2弾。
英子はいよいよ女子学習院の中期4年を修了し、後期3年の課程に進む
(前期4年、中期4年だから今でいう中3から高1ぐらい)。

当時のおひいさま(お嬢様)方は社交界デビューの年頃とて、英子の周辺でも、
好いたはれただの、お見合いだの、駆け落ちだのといった話が聞こえてくる。
そんな日常において出来する事件の謎をめぐる英子とベッキーの活躍が描かれている。

残念なことに、本作でベッキーさんの素性が明かされてしまう。
個人的には、この謎はできるだけ引っ張って欲しかったし、明かされた正体も意外に
平凡というか、衝撃度は小さかった。まあ、まだ謎は少々残されてはいるが…。

ただ、描かれている時代がこの先いよいよ暗い軍国主義の時代へと突入していくことを
考え合わせると、作者にとっては続編を書き続けていくことがかなり厳しいのではと
心配してしまう。本シリーズのファンとしては、第3弾あたりで終了とならないことを
祈っているのだが。

個人的には、昭和初期という時代に興味を惹かれるものがある。
大正デモクラシー後、戦前においてもっともリベラルな空気を纏い、昭和文化が花開き、
モボ、モガが闊歩した時代。

北村薫はかなり緻密に時代考証を重ね、この時代の雰囲気をかなり忠実に再現している(と思う)。
例えば、当時女子学習院のあった青山や、現在衆・参両議長公邸のある永田町の
旧閑院宮邸あたりの描写、銀座和光の時計塔の竣工当時の話等々実に興味深い。

それと例によって博覧強記を発揮し、当時の詩歌、書画、美術、思想に至るまで巧みに、
しかも嫌味なくストーリーに取り入れていくところなど、感心しきり。

そして、北村作品に共通する登場人物たちの繊細な思考と、思いやりに満ちた解決案の提示。

「日常の謎」が北村作品のキャッチフレーズとなっているが、その(主要)登場人物たちは、
非現実的と思えるほど、優しく、繊細で純粋なことが多い。

このシリーズでは、時代設定が今から70年以上前なだけに、そんな純粋な人物像にも
一層違和感なく溶け込めるのかも知れない。
玻璃の天   玻璃の天
北村 薫
文藝春秋
おすすめ度:
価格: ¥ 1,250
円 (税込み)
古き良き昭和の人々 昭和初期のお嬢様、花村英子が運転手のベッキーさんの力を借りつつ、さまざまな事件、
謎を解いていく連作中編集。

二人で、となると典型的にはホームズとワトソンとなるが、本シリーズの場合、
ちょっと捻ってあって、どちらがホームズでどちらがワトソンかは読んでのお楽しみ
というところ。

本格的な謎解きは勿論、これにベッキーさんの出自の謎が絡んでいく。
また、昭和初期の時代、風俗の描写が興味深く、ベッキーさんとの出会いや事件を通じて、
英子が段々と成長していくさま(本シリーズも「『円紫さんと私』シリーズ」同様、
ビルドゥングスロマンの性格を有している)も共感を持って読める。

北村薫は「『円紫さんと私』シリーズ」に象徴される「日常の謎」派の代表的作家であり、
余韻の深い文体と柔らかな語り口が特徴の叙情派、文学派ミステリーの旗手という印象だが、
一見、叙情と感傷に満ちているかに見えて、時に描く悪意や人間の哀しい性には、
はっとさせるものがあり、本作でも表題作「街の灯」にそれが見て取れる。

また、英子の一人称で語られる文体は、青春小説らしく、理屈っぽく青臭く感じられる
こともあるが、時代設定が昭和初期であることで、却ってその頃の雰囲気を表すのに
しっくりきてるような気がする。

街の灯 (文春文庫)   街の灯 (文春文庫)
北村 薫
文藝春秋
おすすめ度:
価格: ¥ 500
円 (税込み)
この授業を受けてみたかった  大学での講義からの抜粋という形だが、聴講した学生が羨ましくなる内容だ。もともとが話し言葉であるだけに、ひとり突っ込みや、話の脱線、学生とのコール・アンド・レスポンスなどライブ感に溢れているのも楽しい。  この面白さは、@興味の対象と講義の内容が合致している、A座学だけではなく演習が混じっている、Bフィードバックがある、C現役の作家に対する興味、で構成されていると思う。
 @は大学の授業だと当たり前のようだが、実際には基礎や一般教養などで必須科目だから受講する場合も多いと思う。Aは耳学問だけの頭でっかちを防ぐ意味でも重要だ、Bは参加意識や、個人的なモチベーションの向上に不可欠、Cは世俗的な興味で、このスパイスにより単調になりがちな講義にアクセントが加わると思う。
 このように講義の好例としての意義も深いのだが、一番の収穫は読解や創作の解答に幅を認めているところではないかと思う。これは受験時代とは大きく異なるところだ。
 最後の第17章はそれまでとやや趣が異なる。しかし「分かるということ」とその悲劇、そして「読むことが書くことと表裏一体の表現である」という結びは感銘すら覚える結びである。

北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)   北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書)
北村 薫
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,365
円 (税込み)
観た、観た、読んだ、観た 何気なく観た機内映画。不思議な感じがして2度繰り返して観た。しばらくしてから原作を読んで、その後再度DVDで映画版を観た。「時と人」シリーズと言われるものの一つだと知ったのは原作を読み終えてから。結末が見通せてしまうのはこの設定では仕方ないのかも知れないが、そんなことで興ざめになるとかならないとか考える前に読み終えてしまう、不思議な魅力のある作品だ。そうでなければ何度も映画を観たりしない。
タイムパラドックスもの(本作ではパラドックスと言う程ではないが)に素直に身をゆだねるのは好きな方なので楽しめた。他の2作も読んでみよう。
ターン (新潮文庫)   ターン (新潮文庫)
北村 薫
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 620
円 (税込み)
面白いです!! 北村先生の文章がとても好きです。
柔らかくてほんわかします。スキップを読んで、自分がもしこうなったらどうするだろう・・・!!考えてしまいました。
とても面白かったです。
スキップ (新潮文庫)   スキップ (新潮文庫)
北村 薫
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 780
円 (税込み)
23の楽しみ 「人生の時間を彩る23篇」とオビにあるとおり、北村薫さんが切り取ったさまざまなシーンが
ちりばめられている。
もったいない、もったいないと思いつつも、読むのをやめられずページを繰った。
語り口もさまざまで、読み飽きない。
落語調のサゲがあり、ぞくっとくる恐怖があり、しみじみとした秘めた思いがあり、
駄洒落のオンパレードあり……。
北村薫さんの世界にどっぷりひたる幸せを堪能した。そうとしか言いようがない。

個人的には、私は、「凱旋」「ふっくらと」「小正月」「林檎の香」「ホタテステーキと鰻」のような
しみじみとした話が好き。でもやっぱり、本のタイトルに採るだけあって、
「1950年のバックトス」がいちばん胸にしみた。時をへて巡り会う奇跡とでもいえようか。
切なくもあたたかい気持ちにさせられた珠玉の一篇。

1950年のバックトス   1950年のバックトス
北村 薫
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 1,575
円 (税込み)
時を超える愛 ≪時と人≫シリーズ第3弾。
時をテーマにいろいろな描き方に挑戦しているので、シリーズ間の関連は無いので、
「スキップ」「ターン」「リセット」どの作品から読んでも大丈夫。
実際私も「リセット」を一番最初に読みました。

「リセット」は、輪廻転生しても相手を想い続けるピュアなラブストーリーです。

スキップが無情に時が飛ばされてしまう、図でいえば時が一方的に直線的に流れる話で、
ターンがひたすらその場でくるくる輪を描いている話とするなら、リセットは過去と繋がりながら
記憶という輪を描きながら先へ進むようなお話です。
スキップとターンを経た作者がたどり着いたひとつの形なんだろうなと思いました。

北村薫らしい優しくて繊細な静かに時間が流れているような奇麗なお話でした。

 『スキップ』 『ターン』に続く、「時と人」シリーズの第3弾。『スキップ』は、17歳の女子高生が、時間を超え42歳の自分自身へと乗り移ってしまうタイムトリップもの、『ターン』は、交通事故のショックで、延々と同じ時間がくり返す異世界に紛れ込んでしまう話だった。前2作はどちらかというと、時間の存在が主人公たちに苛酷な試練を与える設定なのにたいして、本書においては、時間は彼らに寛容に働いている。

   太平洋戦争末期、神戸に住む女学生の水原真澄は、時局の厳しさを横目で見ながら、友人たちと青春を謳歌していた。真澄には、結城修一というほのかな恋心を抱いている少年がいる。幼い記憶にある、30数年に1度しか見られないという獅子座流星群をいつかふたりで眺めてみたいと真澄は心に期していたが、度重なる戦火がふたりを引き裂いてしまう。やがて終戦を迎え、東京オリンピック開催が近づく昭和30年代前半。小学5年生の村上和彦は、自前で小学生に絵本や児童書を貸し与える女性と知り合う。彼女こそは水原真澄だった。折りしも獅子座流星群の到来まで、あと4年と迫っていた…。

   本書は、愛し合う男女がいかにしてそれぞれの想いを伝えあうかを巡る物語である。獅子座流星群の訪れを挟んで、幾たびも交錯するふたつの生命を、時間は長い長い年月をかけて見守り育んでいくのである。

   最後にでてくる、「我々は死んだりしない」という言葉の奥深さに、きっと胸を締めつけられるに違いない。(文月 達)

リセット (新潮文庫)   リセット (新潮文庫)
北村 薫
新潮社
おすすめ度:
価格: ¥ 620
円 (税込み)
もっと続いてほしい! 円紫シリーズ。この作品では、「私」は大学を卒業して社会人に
なっている。前回の作品とは違って今回の作品には人の死というのは
出てこない。そのことに、ほっとする。「朝霧」の中で語られる
祖父と鈴ちゃんの話は、ちょっと切なかった。また、「山眠る」の
中では父の娘への愛情を強く感じた。どの話もていねいに描かれて
いて、読んでいて心地よかった。このシリーズはこれで終わりなの
だろうか?とても残念な気がする。今までずっとこのシリーズを
読んできて、謎解きだけではなく「私」の成長も楽しみだった。
できればまたいつの日か、円紫さんと「私」に会えることを願っている。
朝霧 (創元推理文庫)   朝霧 (創元推理文庫)
北村 薫
東京創元社
おすすめ度:
価格: ¥ 588
円 (税込み)
品格のある、透明感漂うミステリ風小説。 女子大生である「私」の一人称で展開する日常。その語り口が見事な作品。
「私」は感心するぐらい、普通の真面目な女子大生。文学部に通い、真剣に勉強している。
その私が送る通常の日々が、生き生きと描かれる。
この辺りは、「推理小説」でなく、「推理文学」を書いたフィルポッツの「赤毛のレドメイン家」を彷彿とさせる。とにかく上品であり、自然なのである。ただ、もっと自然で、肩の力が抜けている。
その中で、ふとした疑問が現れる。それは、多くの場合、些細な謎であり、通常は、忘れ去り、二度と思い出すことはない。しかし、本シリーズは、そこに鮮やかな謎解きを見せる、博識の落語家を登場させ、人の不思議さや奥深さを語りかけてくれる。
ミステリーではあるが、文学に関する作者の造詣も相まって、しっかりと読ませ、しみじみとした趣きが味わえる、良作。
文学の勉強にさえ、なります。特に、「六の宮の姫君」がそうです。
永遠に続いて欲しい、新しい古典となったシリーズです。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)   空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
北村 薫
東京創元社
おすすめ度:
価格: ¥ 714
円 (税込み)
アイテム数:105/ページ数:11  次ページ