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鏡の扉を開けると
五つの短編集。主人公は極平凡な日常を生活者として生きている。
「裁縫師」では、六八歳の掃除婦をしている老女が語る話なのだが、物語は、主人公が鏡の前にたち、鏡をドアのように開けると、そのむこうに記憶のなかの自分が生きている、今も生きて呼吸しているという感じに、次々とストーリーが展開していく。 どこかですれ違ったり、挨拶くらいは交わしたかもしれないような、どこにでもいそうな主人公なのに、映っている鏡の後ろには、自分だけの特別な物語を持っている。それがたいへん面白かった。 ストーリーだけでなく、詩人である作者の力量が言葉にはあふれていて、それもじっくり堪能できる。 おまけに 上質なユーモアがにじみ出ていて、「空港」など笑ってしまった。 久々に、この作家の作品を全部読んでみたい、という気持ちにさせられた。 |
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裁縫師 小池 昌代 角川書店 おすすめ度: 価格: ¥ 1,470 円 (税込み) |
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何か、おはなしがこれから始まりそうなタイトルの詩集である。著者は、『永遠に来ないバス』で1997年度現代詩花椿賞を、『もっとも官能的な部屋』で99年度高見順賞受賞の、注目の詩人。初のエッセイ集『屋上への誘惑』でも、2001年度講談社エッセイ賞を受賞した。 「男たち」「女たち」「水源へ」と章題のついた3つのパートから成るこの詩集の冒頭は、「男たち」という詩。小田急線の電車の中から見た、ボクシングジムの情景が写しだされる。 暗い夜のなかで 詩の入り口はさり気なく、しかしありふれた日常の風景を、あらためて鮮やかに立ち上がらせている。言葉は的確で、しなやかだ。 ちょっと変わったタイトルの「深い青色についての箱崎」という詩は、小説仕立て。箱崎一郎という名前の男が登場する。ある日彼は駅前で友人を待っているとき、花壇の青い花に目が留まるや、不意に泣き出したいほどの悲しみに襲われる。詩はそのまま箱崎のストーリーには収まらず、後半は青色についてのエッセイになって、著者自身の青にまつわる思い出や思索の方向へと、虚構ないまぜの連想が広がる。ストーリーに縛られないその言葉の躍動が、自由でたのしい。 従来ある文学のジャンル分けが崩れてきている現在だが、本書も、小説とエッセイと詩の魅力が1冊で味わえる、そんな詩集である。(中村えつこ) |
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雨男、山男、豆をひく男 小池 昌代 新潮社 おすすめ度: 価格: ¥ 1,680 円 (税込み) |
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著者は、いま最も注目されている詩人の1人。『永遠に来ないバス』(1997)で現代詩花椿賞を、『もっとも官能的な部屋』(1999)で高見順賞を受賞。本書は初のエッセイ集だ。40篇のどれも、日常よく見るシーンを入口に、柔らかな言葉で、ゆるい傾斜の坂道を上るように、じっくり書き進めていく。それは、大方の読者の、感情や思考の足腰のリズムに沿った速度なので、読者も実際にその場で視界を共にし、物に触っていくような快さがあり、官能的でさえある。 たとえば、娘に自分と同じ「悪」のにおいを嗅ぎつけた母の怒り、人肉をむさぼるようにカニを食らう男女の寸景、大枚を懐に一人そばがきを愉しむ瀟洒(しょうしゃ)な老人とのひとくさりなど、小説に発展していきそうな篇があり、あるいは体温のある言葉で思索された批評の篇がある。また、内外の詩についてのエッセイも多く、その語りの魅力に案内されながら、普段あまり読まない詩に出あう楽しみもある。 屋上といわれて、どこを想像するだろう。デパートの屋上、それとも職場のビルの屋上か。ここでは学校の屋上。夕暮れ、彼女はたったひとりで何を、誰を待っている? もう誰もいなくなった屋上の闇に、ボールのバウンドする音だけが響く。屋上は、何か起こっているのに忘れられているような、寂しい場所だ。ケイタイさえ持っていれば人にとりあえずつながるが、そのケイタイで、殺し殺される関係にも陥る。現代を生きる若い女性たちが、ハンドバッグに蔵っている不安と孤独もまた、この一集には漂っている。(中村えつこ) |
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屋上への誘惑 小池 昌代 岩波書店 おすすめ度: 価格: ¥ 1,575 円 (税込み) |
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黒雲の下で卵をあたためる 小池 昌代 岩波書店 おすすめ度: 価格: ¥ 2,310 円 (税込み) |
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屋上への誘惑 (光文社文庫) 小池 昌代 光文社 おすすめ度: 価格: ¥ 500 円 (税込み) |









